奈良田の方言

奈良田の方言

奈良田で使われる方言は、甲州弁とは異なり、隣村のものともまた違う奈良田だけの言語である。早川町の中でも、ネイティブな奈良田ことばの会話を聞き取れる人は少ない。特に興味深いのは、そのアクセントだと多くの言語学者が口をそろえる。奈良田は、関東にあって、関西系の訛りや発音なのだ。アクセントは文字では表現しづらいが、ここでは奈良田の土産品としても人気の高い「方言手ぬぐい」にならって、番付表を作ってみた。

奈良田ことば番付表
東方 西方
番付 奈良田ことば 意味 奈良田ことば 意味
横綱 ふうれんちょう ブランコ かあとるまい 肩車
大関 ひとひょうけ びしょ濡れ ひっちのやえん 真っ暗闇
関脇 でんづこう げんこつ ひっちまい お終い
小結 うっかある 転ぶ ぎんぼうじ ふきのとう
前頭 こんぼうず 食いしん坊 うちゃあすれる 忘れる
すばる はにかむ こいしゅねえしゅ この家の人
ひじんまい 火遊び びくしょい 小度胸
ちゅうど すぐに おしのび 恋仲
ちゅちゅうど 大急ぎで てんぽうら 大樹のこずえ
おでやる 陽があたる てえない 頂上

奈良田に伝わる代表的な民話 -読めるカナ?
 「鳥呑み爺」
ここからは上級編。まずは答えを見ずにどれだけ話がわかるか、チャレンジしてみよう。
 昔々、あるところになーよー、おじいさんとおばあさんが暮らいてーとーだげのーに。
 雪が降ってきりもなくさぶい朝げ、おじいさんがかーどいかおー洗いに行ったいば、そこのきっかぶにヒョーンドリがいちゃーとまって、ふれーてーとーだげのーに。
 おじいさんは、かわいげに思ってヒョーンドリょーつかまいて、ハァーといきょーして、ぬくめてやっとーだげのーに。
 そーしたいば元気にうんなって、おじいさんがいかいくちょーあいとー拍子に、くちん中いひっ飛びこんで、はらん中いひっぱいっとーだげのーに。
 そーして、いんめーたったいば、おじいさんのへそいしっぽーつんだいとーどーで、そりょーそっとひっぱったいば、「ピピンピヨドリ ゴヨーノオタカラピッサーヨー」ちて鳴くだげのーに。
 いく度ひっぱってみとーて同じによい声で鳴くどーで、村いかいって村の衆にほらー吹いてありっとーだげのーに。
 そーこーしてーるいとに、それが殿様の耳いきかーさって、おじいさんは殿様のまーさ呼び出され、「はいく鳴いてみで」ちてやれとーどーで、いつものよーにしっぽーひっぱったいば、まーよりゃーよい声で「ピピンピヨドリ ゴヨーノオタカラピーサーヨー」ちて鳴いとーどーで、殿様あえらくほめてほうびょーがいにくれとーどーで、おじいさんは一生しゃーせにくらいとーだげのーに。これで、ひっちまい。

では、難しいところの意味を解説しながら、もう一度。
 昔々、あるところになーよー、おじいさんとおばあさんが暮らいてーとーだげのーに暮らしていました
 雪が降ってきりもなくさぶい朝げものすごく寒い朝に、おじいさんがかーどいかおー洗いに行ったいば水汲み場へ顔を洗いに行ったら、そこのきっかぶ切り株ヒョーンドリがいちゃーとまって、ふれーてーとーだげのーにヒヨドリが一羽とまって震えていました
 おじいさんは、かわいげに可哀想に思ってヒョーンドリょーつかまいてヒヨドリをつかまえて、ハァーといきょーして、ぬくめてやっとーだげのーに息をかけて温めてやりました
 そーしたいば元気にうんなってそうしたら元気になって、おじいさんがいかいくちょーあいとー拍子に大きな口を開けた拍子に、くちん中いひっ飛びこんで、はらん中いひっぱいっとーだげのーにおなかの中に入ってしまいました
 そーして、いんめーたったいばしばらくすると、おじいさんのへそいしっぽーつんだいとーどーでへそにシッポを突き出したのでそりょーそれをそっとひっぱったいばひっぱったら、「ピピンピヨドリ ゴヨーノオタカラピッサーヨー」ちて鳴くだげのーに鳴きました
 いく度ひっぱってみとーて同じによい声で鳴くどーで、村いかいって村に帰って村の衆にほらー吹いてありっとーだげのーに。
 そーこーしてーるいとにそうこうしてるうちに、それが殿様の耳いきかーさって耳に入って、おじいさんは殿様のまーさ前に呼び出され、「はいく鳴いてみで早く鳴いてみろちてやれとーどーでと言われたので、いつものよーにしっぽーひっぱったいば、まーよりゃー前よりもよい声で「ピピンピヨドリ ゴヨーノオタカラピーサーヨー」ちて鳴いとーどーで、殿様あえらくほめてほうびょーがいにくれとーどーで褒美をたくさんくれたので、おじいさんは一生しゃーせにくらいとーだげのーに幸せに暮らしましたとさ。これで、ひっちまい。